日日是好日

思い立ったときにだけ更新。大阪→和歌山→高知→奈良在住。現在、医療系大学教員。 音楽にお酒,映画に読書,四季折々のおいしい食べものと楽しみを満喫することと,愉快で情熱的な仲間と語らうことが,バイタリティーの源です。

緊急事態宣言に想う

新型コロナウィルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令された。

当初、欧米のようにロックダウン(都市封鎖)や違反者の取り締まり・罰則などの不安・懸念や経済に与える影響を鑑みて慎重な姿勢を示していたが、感染経路不明者が増えていることなどから発令せざるを得ない状況に至った。

メディアの報道は、特に対象となった7都道府県の住民を中心にどのような措置が図られるのかという解説に時間を割いている。生活インフラは確保されると繰り返し説明しているが、一方で娯楽施設は自粛が促され、余儀なく休業を迫られた事業主等の悲痛な声が散見している。

この数日のうちに、まさしく急展開と言える勢いで緊急事態宣言の発令に至ったが、興味深いのは、その前後での異なる論調である。緊急事態宣言については、一般市民の声も含めて慎重論が多数を占めていたように思うが、発令後は「遅すぎる」という政府の判断力を批判する声も聞こえてきた。この際、政権の好き嫌いは置いておいて、この状況に至っては、どんな手を尽くしてもベストな選択というものはなく、段階的に手を尽くしていくしかないのが現状だろう。いかなる手段を講じても、「粗」な側面は見え隠れする。こういうときだからこそ、至らぬ点にばかり注意が払われるのも致し方ない。しかし、繰り返し政府やメディアが訴えているように、今自分ができることをひとり一人が自覚して行動に移すことこそが、辛うじてベターといえるものなのではないか。

今朝の情報番組「とくダネ」では、キャスターの小倉さんが自宅の書斎からの中継出演(テレワーク)であった。感染予防のためであるが、氏自身も「私自身がリスクのある高齢者」とコメントしていた。思えば2週間ほど前から、ニュース番組等では、出演者間の社会的距離がとられるようになり、別室からの中継出演も増えてきた。タレントやテレビ局関係者にも感染が至ったことから、撮影遅延・中止や放送の見送り・延期も報道された。

私事であるが、先日、足を運んだドコモショップでは、窓口の時短、顧客対応が予約制となっていた。そのせいもあってか、利用客の姿はまばらであった。一方で、利用している美容室(奈良県内)では、顧客は減るどころか大阪からの利用者が増えているという。感染者が多いエリアから逃れるように、周辺エリアにニーズが拡大しているのだろう。しかし、これが結果としてウイルスを運んでいるとなれば皮肉だ。理髪店も「3密」業態であり、悩ましいところである。マスクや消毒液が店頭から姿を消して久しいが、いずれにしてもこれだけ身近に事態が迫っていることをいやでも自覚せざるを得ない状況に至った。

感染症に対する「素人」が粛々と感染予防のために自粛生活を送っているかと思えば、患者を守るべき立場になるはずの研修医が、組織で禁じられていた会食を行ったことによる集団感染も報道された。「素人」よりも意識が高いはずの者であってもこういう行動をとってしまう不思議。よく日本人は平和ボケしているなどと揶揄されるが、「他人ごと」「自分は大丈夫」がどれだけ今回の感染拡大に影響するか考えてみてほしい。これは決して対岸の火事ではない。

経済対策については、リーマンショック時の約2倍に相当する緊急経済対策を講じると報じられたが、その成果も見通しは不明である。減収世帯への現金給付、中・小規模事業者への給付金などはその場しのぎに過ぎず、根本的な解決手段ではない。しかし、これによって生き永らえなければ、新型コロナウイルスが収束した先の景気上昇は叶わない。

 

 今日の朝日新聞朝刊に、「ネット情報うのみにせず調べる」という高校生の投稿が掲載されている。情報が錯綜するこんなときだからこそ、情報リテラシーが問われる。情報の洪水下で育った高校生が訴えていることに、その説得力がある。この緊急事態宣言が発令された状況下、集団の希望に寄与できるよう耐え忍ぶ所存である。